刺繍ルームのコラム。刺繍のお役立ち情報や刺繍作家としてのことなど

ブーケ賞② by刺しゅうアートフェスティバル2026 

2026/08/11

2026年7月16日〜21日に開催した「刺繍アートフェスティバル2026」において、弊社からはインタビューをしたい。お話を聞いてみたい、そこを基準に3名の作家さんを選出し、「ブーケ賞」をお贈りいたしました。
 

その中から本日は、受賞された益山紗和さんの作品をご紹介します。

 
余白とリズムある小さなパーツのバランスが絶妙な作品。
蝶の動きと立体感、水の流れ、お城の安定感、そして空を漂う気球。
夢のある世界はどんな空想からきたのでしょう。

益山さんは、なんと高校生!!
高校生作家の空想物語を読み解きたく、インタビューをお願いしました。


 

刺繍アートフェスティバル2026
ブーケ賞
刺繍作家インタビュー

まず思い出すのは搬入の日の事。
作品を持って現れたのは制服姿の笑顔がかわいい少女。

「お母さんの作品、持ってきてくれたのかな?」みんなの問いに
「いいえ、私の作品です。」ニコッと。

その場にいた私やボランティアさん、全員のテンションが一気に上がったのでした。そこからは、みんなで取り囲んで益山さんに質問攻め!!私たちは親戚のおばちゃんでしょうか笑
若い子の登場で、搬入の疲れも吹き飛んだ瞬間でした。

たくさんのお友達と一緒に会場に来た日、お母様と来場された日、そして閉会セレモニー。刺繍も会場も楽しんでくれている姿が印象的でした。

技法にこだわることなく、
アニメが好き。世界観のある刺繍をしたい。
自分の「好き」から作り出す刺繍も今の若い世代らしい刺繍との出会いなのかもしれません。

はじめて大きな作品の挑戦したり、趣味として長く楽しんできた方、そして益山さんのように若い世代も。
いろんな人が、同じ会場に作品を並べて、お互いの作品から刺激を受ける。
そんな場と、出会いによって、きっとさらに進化した作品が生まれるでしょう。「これからの作品」も楽しみです。
 

福田彩

自由に刺す。自由に描く。
好きから始まる、これからの刺繍


益山紗和

はじめての刺繍

益山さんが、いつくらいから、どんなふうにして刺繍をスタートすることになったのかを教えてください。小さい時から手仕事が好きだった?初めて刺したのはどんな刺繍だったのでしょうか?

なんで刺繍を始めたのかと聞かれるとこれといったきっかけはないのですが、いろいろなジャンルのものづくりに触れてきた流れで挑戦したということが一番です。

私は保育園生のころから手を使って編むマフラーを作ったり、段ボールや新聞紙を使って秘密基地や小物を作るなど、手仕事が好きでしたが、はじめて刺繍をしたのは中学1年生だったと思います。

そのときは布にミモザの刺しゅうをしてポーチを作ってプレゼントしました。このポーチは今でも母が大事に使ってくれています。

会場でお母様とお話をした際に記念すべき作品1号のポーチを見せてもらいました。
お母様のバンブー持ち手のバッグもなんと益山さんの手作り!!




 

刺繍と生活

普段どんな刺繍をしていますか?

普段はアニメのキャラクターや描写の刺繍をしています。
ジャンルで言ったらフランス刺繍なのだと思うのですが、そういったことはあまり気にしたことがありませんでした。

以前は動画を見ながら小物を作って知り合いにプレゼントをしていたのですが、プレゼントする相手も物もネタ切れになってしまったことに加え、部活動が忙しくなってしまい一度は刺繍をやめてしまいました。

高校生になり忙しくない部活に入った時に、SNSでアニメのキャラクターを刺繍している動画を見たことをきっかけにそういった刺繍を始めました。

 

制作スタイルやこだわりがありましたら教えてください

こだわりというほどではないかもしれませんが、強いて言うならば色は絶対に納得がいくまで悩んでいます。

普段はアニメの刺繍をすることが多いのですが、もともと色は決まっているものの、描写によって色合いが変わってくるので一番しっくりくる色を探すのが楽しくもあり、持っていないかもしれないと考えると苦痛でもあります。

でも、これだ!と思える色に出会えた時の達成感は何にも代えがたいものがあると思っています。

普段はいつ、どんなふうに刺繍をしていますか? 刺繍をするときの過ごし方や、お気に入りのスタイルがあれば教えてください。

刺繍をするときは週末にアニメやドラマを見ながらやっています。なにかを見ながらやらないと集中ができないのですが、長時間作業をすることもあるので一日二日で見終わってしまうことも多く、見るものがなくて困ってしまうこともあります。そういうときは見るもの探しに3.40分かかってしまうこともあります。

刺しゅうアートフェスティバル

刺繍フェスに出展しようと思ったきっかけ。そして家族や周りの反応はいかがでしたか?

出展しようと思ったきっかけはちょっとした雑談の中で母に「なんでもいいからコンテストとか出してみれば?」という言葉でした。

私は基本的にアニメキャラなどの刺しゅうをしていたのでオリジナルの作品を作ることができるのか本当に不安だったのですが、物は試しだと思い、「刺繍 コンテスト」と検索して一番上に出てきた刺繡アートフェスティバルに応募しました。

家族や友人はみんな応援してくれて、実際に会場に足を運んでくれる人も多かったです。 

この作品は、物語を書く女の子をはじめ、さまざまなモチーフが散りばめられていますが、どのようにデザインを膨らませ、完成まで制作を進めていったのでしょうか? こだわったポイントや制作中の気持ちも教えてください。
実は写真審査の2か月前くらいまでは別のデザインを考えていました。
でもなんとなく納得いかなくて急遽変更することにしました。

そうはいってもすぐにデザインが思いつくわけではないので、苦労はしたのですが、自分の好きなモチーフを詰め込もうと思って、物語を書いている女の子から蝶、滝、城、船、月、星などさまざまなモチーフに発展させていきました。

製作期間と学校のテスト期間が重なってしまいとても大変だったのですが、同時にとても楽しい期間でもありました。

忙しくても自分の納得するクオリティは出したいと思ったので何度も作り直したり、滝の流れなど細かいデザインにもこだわりました。
 
作品が完成した時、会場で見た時、そして今。感情の変化、刺繍への思いの変化はありますか?

作品が完成したときは達成感と間に合ってよかったという安心感が大きかったです。
家族や友達、刺繍が趣味の学校の先生に見せたらみんなが褒めてくれてとてもうれしかったです。

会場で見たときも自分の作品が展示されているという事実を実感できてとてもうれしかったです。でもそれと同時に、たくさんの作家さんの作品を見て自分の技術がまだまだだということを実感しました。

今回たくさんの作品の様々な技法を見て刺激をもらったので、今後はいろいろなことに挑戦していきたいなと思いました。

直近では、成人式の髪飾りを自分で作ってみようかなと考えていいて、とてもわくわくしています。

 

会場へは、搬入時、お友達と来た日、お母様と一緒に来た日、閉会セレモニーと何度も足を運んでいただきましたが、それぞれ気持ちの変化や、周りの反響などはありましたか?

搬入の時は自分の作品が飾られるということを実感してとてもうれしかったです。
また、運営スタッフの方々に「高校生!?」と驚かれて想像以上にかわいがっていただいたのも印象的でした。

友人や母と来たときはみんなたくさん褒めてくれて少し恥ずかしかったのですが、とてもうれしかったです。

それと同時に搬入の時よりもじっくりとほかの方の作品を見ることができて、様々な技法があることを知りとても良い刺激を受けることができました。 

未来へ

益山さんにとって刺繍とは?
私にとって刺繍は自分の「好き」を自由に表現できるものです。

特に好きなアニメや世界観を絵とはまた違った質感で表現できるところが好きです。

絵ならば数十分、数時間で完成するものをわざわざ何十時間もかけて刺繍する理由は、やっぱり刺繍独特の質感が好きなことや、アニメを見ながらリラックスできる貴重な時間だからだと思っています。

また、刺繍は私にとって唯一、学校内でほかのだれにも負けない自信がある能力なので、自分らしさを発揮する存在度と思っています。

 
学生生活と刺繍。両立の秘訣とは?

秘訣というほどではありませんが、やりたいと思ったときに一気にやってしまうことです。

私は飽き性な部分があるので、布に下書きだけして放置しているものもいくつかあるのですが、やりたいと思ったときは1日2日で完成することが多いです。

あとはなるべく学校が忙しい時期にやらないということです。
今回は期限が決まっていたうえ、デザインを直前で変更したので、テスト期間にかぶってしまったのですが、やっぱりやることのない休日にゆったりとできるのが精神衛生上いいなと身にしみて感じました。

今後の展望、作家としての想いなど、伝えたいこと
できれば来年の刺繍アートフェスティバルまでに自分の刺繍作家としてのSNSアカウントやショップを開設したいなと思っています

私は自己流だし本格的に刺繍を再開したのは去年で、技術面では未熟な部分が多いのですが、今回たくさんの刺繍に触れることができて、たくさん刺激をいただいたので今後の制作活動に活かしていきたいと思います。

この刺繍アートフェスティバルを開催してくださった福田さんをはじめとする、関わってくださったすべての方に感謝を伝えたいです。

 

益山紗和


刺繍アートフェスティバル2026ブーケ賞受賞。
 

「空想を書き綴る」
 

刺繍では表現できないグラデーションを絵の具で、
絵の具では表現できない立体感を刺繍で作り上げました。
川の流れや飛沫、
蝶の模様などの細かい刺繍にも力を入れたので、
ぜひみてください!