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株式会社ブーケ賞 by刺しゅうアートフェスティバル 

2025/08/08

2025年7月17日〜21日に開催した「刺しゅうアートフェスティバル2025」において、弊社からは

 

・株式会社ブーケ賞(2名)

・andBouquet賞(5名)をお贈りいたしました。

その中から本日は、株式会社ブーケ賞を受賞された
「acco」さんの作品をご紹介します。

 

繊細な色味と多様なステッチとこだわりポイント、ぜひご覧ください。

 

株式会社ブーケ賞
刺繍作家インタビュー

刺しゅうアートフェスティバル2025 にて、株式会社ブーケ賞を受賞された「acco」さん。

美しい色彩で絵を描くような刺繍に心惹かれ、見れば見るほど多彩なステッチが織り込まれているデザインに引き込まれてしましました。

そして私がなぜこんなにもこの作品に惹かれたのか。デザイン、技術だけじゃない、なんだろう。

このインタビューでその理由がわかり、そんな伏線に鳥肌が立ちました!!!
なんと私も大大大好きなアニメがテーマだったのです。そんな偶然があるでしょうか?

作品を見ている時には気づかなかったし、図録の文でもわからなかった。でも理由がわかった今、作品を見れば見るほど、伏線回収されて、興奮してしまいました。
accoさんのこの作品への想い、私には響きましたよ。

この後のインタビューでaccoさんもおっしゃっているのですが、とても残酷でダークなお話です。でもその話をこんなにも美しく仕上げたことは、きっとヒロインも赤いマフラーを抱えて喜んでくれていることでしょう。
福田彩

美しさの表現にある想い
物語を刺繍に


acco

 刺繍のきっかけ

accoさんがどのように手芸、刺繍の世界に入って行かれたのか、きっかけを教えてください。

幼い頃から可愛い物、美しい物に惹かれてました。

大人になってからはトールペイントにのめり込み、日本手芸普及協会で講師資格を取得し、子供達がまだ幼稚園に通う頃、自宅でお教室も開いてました。その後夫が海外転勤になり帯同する為、お教室は閉鎖しました。
 

刺繍にはずっと興味を持っていましたが、初めて刺したのは28年くらい前になります。

当時は夫の駐在に伴いロンドンに在住しておりました。4歳になる長男を抱えての異国暮らしには不安も多く、近くにいらっしゃる日本人駐在員の奥様が誘って下さったこともあって、ウール刺繍を始めました。先生はイギリス人でグループごとに出張レッスンをして下さいました。ご一緒した皆さんはお子様が皆同じ学校や幼稚園に通っていて、刺繍をしながらのお喋りも大変楽しく、どんどんのめり込んで行きました。初めて刺したのはイギリスの住宅風景の作品でした。その他、可愛らしいtea cozyなども作りました。

1998年に長女が誕生してからは、子育てに忙しくあまり作品制作に時間を割けなかったのを覚えています

刺繍スタイル

普段どんな刺繍をされていますか?
制作スタイルやこだわりがありましたら教えてください。

日本手芸普及協会の通信講座で白糸刺繍の講師科まで習いその後は越前屋手芸教室で廣岡均子先生のクラスに入会して学んでいます。廣岡先生のクラスでは非常に幅広く対応して下さり、ハーダンガー刺繍をはじめ、ドロンワーク、クロスステッチ、カットワーク、サテンステッチなどを学んで来ました。

お教室ではその時に作りたいと思った作品に挑戦させて頂いてます。

制作スタイルとしては、今後はカットワークとサテンステッチの入った白糸刺繍を中心に、より技術を高めて行きたいです。

刺繍デザインのため、インスピレーションを得るためにされていることはありますか?

特別な事は特にはしてないですが、好きな音楽を聴きながら近所をお散歩するのが大好きなんです。緑豊かな地域なので、四季折々自然に漂う花や木々の香り、何より季節や時間帯によって微妙に移り変わる空や木々、花々の色彩などからふとデザインを思いつく事はあります。その他、美しい建造物、食器や雑貨などからデザインを思いつく事もあります。

インスピレーションは思わぬところに潜んでるような気がしています。

 

 刺しゅうアートフェスティバル

刺しゅうフェスに出展しようと思ったきっかけ、家族や周りの反応はありましたか?

インスタグラムで刺繍フェスティバルの案内を見た時に、ちゃんと期限に間に合うよう制作できるか不安もありましたが、自分にとっての良い目標と挑戦になると思い応募を決めました。

家族も私の挑戦に背中を押してくれました。

作品が完成した時、会場で見た時、そして今。感情の変化がありますか?

作品の完成時はとにかくホッとしました。その後は反省点などに視点が移り、より冷静に作品を見れるようになったと思います。

この作品を作るにあたってデザイン的に考えたことを教えてください。また、どのようなスケジュールで制作されましたか?

細かい柄が好きなので、唐草模様は刺してみたいと思ってました。

図録にもあるように、この作品はある物語のヒロインの言葉をテーマとしています。その物語の中で鳥、蝶は欠かせないアイテムでしたので、特に鳥はメインに持ってくる事と、主人公とヒロインのイニシャルは入れたかったです。細かな唐草模様、左右対称の鳥とメインの鳥、2人のイニシャルをいくつかの技法で刺してあり、見て頂きたいポイントです。
 

デザインが仕上がったのは昨年末でした。
当初はもう少し大きな作品にしたかったのですが、期限に間に合わなくなる可能性があったので縮小しました。上部の唐草模様をコードネの技法で刺しながら、本当に間に合うか不安でした。

図録を見ると作品には強いテーマ性があるように感じました。その物語についてお聞かせください。

きっかけは娘から勧められて見たあるアニメーションでした。世界中で人気となったこの作品は、主人公が自由と真実を求めて闘い続ける壮大なダークファンタジーですが、単なるバトル作品ではなく、正義とは何か?悪とは何か?争いはどうして起こるのか?など人間の普遍的なテーマを視聴者に問いかけるような素晴らしい作品です。作中、伏線&回収も沢山散りばめられており、その点でもとても楽しめます。ファンタジーなので、時間軸があちこち変化する為難解な点も多々あり、私も一回では理解できず、3周してようやくほぼ理解しました。

闘い続ける物語なので、残酷な描写も多々あります。そして悲し過ぎる結末は、世界中の人々を泣かせたと同時に、本当にこの結末で良かったのか?と言う思いも多くの人々が抱いたのではないでしょうか。

特に女性の視点から見ると、どうしようもなく切ない話でもあり、その強烈な切なさに私は暫くトラウマになりました。そんな思いから、作中では叶うことのなかった主人公とヒロインの思いを刺繍作品にして、自分の心にここまで深く刻まれる物語を書いて下さった作者の先生に心から感謝したいと思いました。

この作品のテーマ、メッセージ。そしてそれをどのようにして作品にこめて、見る人に届けようと思ったか

テーマである「いってらっしゃい」と言う言葉は日常で使う言葉であると同時に、この物語のヒロインが主人公へ捧げた最後の言葉です。この作品にとって非常に重要な意味を持つ言葉です。

主人公、ヒロインをそれぞれを象徴する鳥、蝶、そして2人のイニシャル、物語の中で度々流れる「この世は残酷で美しい」というメッセージの「美しさ」を特に表現したいと思いました。

刺繍技法

作品には様々な技法がが入っていると感じました。作っている中で1番難しかったところ、そして1番満足な点、こだわった技法などはありますか?

コードネ、プリュムティ、カットワーク、チェーンステッチ、アウトラインステッチ、ヘデボで刺しています。一番苦労したのは、やはりコードネです。とにかく細く美しく刺すのは至難の業で、まだまだお恥ずかしい限りです。

カットワークやヘデボも、もう少し生地の特性を考えてボタンホールステッチを刺すべきだったかなと考えてます。プリュムティは土台の芯の部分にムラができてしまったので、これらは全て反省点であり、今後の課題にしていきたいと思ってます。

満足している点は、鳥に刺したチェーンステッチとアウトラインステッチの組み合わせでしょうか。お教室で廣岡先生からアドバイスを頂きました。

 

色使いにもとても心惹かれました!この色はどのように決めていったのでしょうか?

色使いに関しては、私の大好きなアイスブルーというイメージで仕上げたいと思い、それに近い形になるよう鳥のグラデーションなど心がけました。白、グレーとブルーを基調として全体がまとまるよう刺して行きました


 

刺繍とくらし


暮らしの中で、刺繍があることで変わったことはありますか? 

 子供の頃から手芸が大好きで、大人になってからはいつも何かしら作ってました。その中でも刺繍は生地、針、糸とハサミさえあればどこでもできます。在宅時は暇さえあれば刺していて、今では生活の一部となって楽しみと彩りを与えてくれています 

今後の作品作りについて想いをお聞かせください

技術面ももっと上達して人様の生活を彩る事ができるような作品を作れる作家になりたいと思ってます。

嬉しいことに今回のフェスティバルをきっかけに、友人のお嬢様の結婚式で使用するリングピローのご注文を頂きました。大切な記念の良き品になるよう、まずは全力で取り組みたいと思います。


accoさんにとって刺繍とは?

嬉しい時も悲しい時もいつもそばに寄り添ってくれる大切な人生のパートナーのような存在であり、自分を表現する大切な場でもあります。

acco

刺繍作家 acco
日本手芸普及協会白糸刺繍認定講師
いってらっしゃい

この作品は私の心に深く刻まれたある物語を表現しています。
儚くも壮絶な人生を送った主人公と、その死後も彼を生涯思い続けたヒロインとの叶わなかった夢を思い描き作品にしてみました。
技術面では今後の課題も多々ありますが、楽しく刺せました。

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