andBouquet賞① by刺しゅうアートフェスティバル
2025年7月17日〜21日に開催した「刺しゅうアートフェスティバル2025」において、弊社からは
・株式会社ブーケ賞(2名)
・andBouquet賞(5名)をお贈りいたしました。
その中から本日は、andBouquet賞を受賞された「wacca」さんの作品をご紹介します。
丁寧に重ねられた一針一針に込められた想いを、インタビューとともにぜひご覧ください。
andBouquet賞
刺繍作家インタビュー
刺繍作家インタビュー
白と茶のシンプルな色でまとめられた、waccaさんの作品。
一見すると控えめで静かな印象なのに、不思議と心に強く残る。
そんな記憶に残る一枚でした。
どうしても色々と盛り込みたくなってしまう刺繍の中で、彼女の作品は“引き算の美しさ”が際立っていました。それでいて、しっかり「魅せるポイント」があり、「伝えたいテーマ」も明確。その潔いデザイン力に、とても感動しました。
作品から感じる“子どもへの想い”は、私自身の子育て期とも重なり、きっと多くの方にも共感を呼ぶ物語があるに違いないと感じました。
「刺繍を続けたいけれど時間が取れない」「育児中でも、自分のために何かを始めたい」そんな想いを抱える方の背中を、そっと押してくれるような存在。
だからこそ、今回、waccaさんにインタビューをお願いすることにしました。
子育てをしながら刺しゅう作家へ
waccaさんが語る“好き”を続ける暮らし
waccaさんが語る“好き”を続ける暮らし
wacca
刺繍のきっかけ
刺繍を始めたきっかけを教えてください。
小さい頃から手仕事は好き?
いつくらいから、どんなふうにして刺繍をスタートしたのでしょうか?
刺繍は7年程前、義母に教えてもらったのがきっかけです。
幼い頃は曾祖母に編み物やフェルトの小物作りを教えてもらったり、塗り絵を楽しんでいました。二人で塗り絵のコンテストに応募した思い出も。母も、幼い私と妹にお揃いの服を作ってくれ、ミシンは家にあったので、数年に一度、気が向いた時に母に借りて簡単なものを作る程度でした。
初めて刺したのはどんな刺繍だったのでしょうか?
義母はいろいろな手仕事を楽しみ、本もたくさん持っていてキルト、刺繍、洋裁、編み物などいろんな世界を教えてくれました。
一緒に展示会やおしゃれなお店を巡り、手仕事ってこんなにオシャレなの?と衝撃でした。
初めての刺繍はうろ覚えですが、パリのデザインのクロスを作るキットだったと思います。初心者でもできるか義母に裏面を見てもらい、小さな端切れで基本のステッチを教えてもらいました。「刺繍の枠ってこんな風に使うんだ!」「糸でこんなことができるの?楽しい!!」とワクワクがとまりませんでした。
その後、初めて短期のレッスンを受けて、始め方は簡単でもコツを知れば知るほど綺麗に刺せるのが嬉しい!と、どんどん刺繍の虜に。
少しでも自分のものにしたくてポイントをノートにかきとめました。
出来上がったときも嬉しいですが、同じくらい製作途中も楽しい。
完成したら、もう二度とは戻れない途中経過の道のり。
それを残したくて、備忘録としてインスタを始めました。
刺繍好きの方とつながれて、そのやりとりも楽しんでいました。
白糸刺繍への熱
まだまだ何をやっても新しい発見や勉強になることばかりで、義母からもらった道具等を活用し、好奇心の赴くままにさまざまな刺繍に挑戦しています。
お教室に行ったり、オンラインレッスンを受けたりもしています。
白糸刺繍は、今のところハーダンガーとヘデボの経験があります。白糸刺繍が製作の中心という訳ではないですが、今回のフェスで白糸刺繍の様々な作品を見て改めてその奥深さを感じ、白糸刺繍への熱がより熱くなりました。
子育てと刺繍
どんな時間に刺繍をしていますか?
平日は息子のお昼寝中や、早く目覚めた朝、夜寝かしつけを終えた後など、少しでも時間があれば刺繍時間をとれないかとタイミングを狙っています。
また、同じ子育て中の友人が刺繍に興味を持ってくれたので、お昼寝のタイミングを合わせて刺繍をしたりもしています。子育て中の悩みや喜びを話しながら、一緒に刺繍できる友人との時間はかけがえのないものです。
子育てをしながら刺繍時間を作るために気をつけていることなどがあれば教えてください。
刺繍をする時間を優先しすぎて、家族や家事がないがしろになったり、自分へのストレスも増えすぎないように気を付けています。
その為に、子育て支援を利用して、無理なく時間を作れるようにしています。
その背景には、地域の充実した子育て支援と、
夫の「子育て中でも自分のために時間とお金を使うことを大切にしてほしい」と常々言ってくれている後押しがあります。
見知らぬ土地での初めての子育てで、子育て支援の利用には最初少し勇気がいりましたが、利用してみると出会いが増えて世界が広がりました。
感謝を伝えると、「こちらこそ楽しい時間を過ごさせてもらってありがとう。使えるものはどんどん使って頼ってね。」と言ってもらい、今ではすっかり甘えさせてもらっています。
子育て中でも、好きなことをマイペースに続けられることに、とても感謝しています。
応援と協力
刺しゅうフェスに出展しようと思ったきっかけを教えてください
フェスの応募を知り、インスタライブを拝見したのがきっかけです。
出産を機に地域で多くの出会いに恵まれ、出会いが新しい出会いにつながる日々を過ごしておりました。
自己紹介をする機会も増え、刺繍の話になると楽しそうに聞いてくださることが多く
「ちょっとやってみたいから教えてよ」
「そうやって自分の時間を作るのって大事よね、子どもは大きくなったら離れていくから。親も趣味を作るって大切よね、ワークショップ決まったらぜひ教えてね!」
と声をかけていただき、「刺繍で何かしたい」という思いが強くなりつつも、その何かがまだはっきりせずぼんやり考えていました。
気になったことには、とりあえずトライ。そのあと考えてみるという性格もあり、ノープランでしたが一歩踏み出してみようと応募しました。
家族や周りの反応はどうでしたか?
展示してもらえることを目標に作品作りをしていたら
「聞いているだけでワクワクする!応援してるね!また話聞かせて!」と声をかけてもらえたり、「私も何か始めてみようかな」という声も。
夫も、夜の寝かし付けを交代して時間を作ってくれて、挑戦することに意味がある、と応援してくれました。
作品作り
この作品を作るにあたってデザイン的に考えたこと、こだわりポイント、アピールポイントを教えてください。
生まれた時の足型を刺繍することだけは最初から頭にありました。
自分のできる技法で、人とかぶらない作品と考え、技法はヘデボでいこうと決めました。
色々と入れたい要素はあったのですが、ごちゃごちゃしないようにシンプルを意識しました。
申し込みから当日までどのようなスケジュールで製作されましたか?
スケジュールは息子の急な体調不良等が起きても大丈夫なように、少し早めに自分の中に設定しました。
完成目標を4月末に設定して、1月頃に紙に書き始め、2月下旬にデザインが完成し、布に写して刺し始めました。完成したのは4月23日でした。
仕上げのアイロンをかけた際に針の穴らしきところが茶色くなって、最後の最後で失敗か
・・・と断念しかけましたが、無事に消えてなんとか完成しました。
どのようなお気持ちで過ごされましたか?
製作開始、作品が完成した時、会場で見た時、そして今。
感情の変化がありますか?
画像や本を参考にいざえんぴつを持つも、紙に書くのは難しく、
等間隔にする為にトレーシングペーパーを折ったり、コピーをするアナログスタイル。
そもそも何をもってオリジナルというのか?本をどこまで参考にして良いのか? 迷走した時は孤独で不安でした。
デザインするってこんなに難しいんだと実感し、本を出されている数々の作家さんへの敬意がさらに強くなりました。
デザインが決まった時、方向性が定まって一歩進めた気持ちになりました。
作品が完成した時は、なんとか形になったと達成感と安堵の気持ちでした。
その余韻にひたる時間はなく、発送の日を間違えないようにしないと!とスケジュール帳に書いて日常を過ごしました。
いざ会場に向かうと、他の方の作品の素晴らしさに圧倒され、なかなか自分の作品の前に行けませんでした。見たいような、見たくないような。ドキドキしながら近付いたのを覚えています。
開催期間中は、入口では家族写真を撮ってもらったり、心からフェスを楽しみました。
出展者だからこそ感じられる楽しみ、感動、共感があり、主催のお二人や、特別審査員の先生方とお話させていただき多くの学び、刺激、励ましをいただきました。
他の出展者の方とお話できたのも楽しくて、フェス最高!と刺繍の新しい楽しみ方にうかれていました。
子どものこと以外でこんなに想いが込み上がる経験はなく、ここには書ききれないたくさんの宝物を頂きました。
フェスが終わった今は反省点が出てきて、自分の未熟さも感じています。白糸刺繍は伝統技法でとても奥が深い、知識や経験豊富な方から見たらお叱りを受けるような作品だったのではないか。それでも、今の自分にできる精一杯を形にできたことは、確かな一歩だったと感じています。
今回の作品はデザインもエピソードも息子に助けられました。
もっともっといろんな刺繍を知りたい、上達したい思いが強くなりました。
フェスでの反響
会場へは小さな息子くんとご主人とでいらしてくださり、翌日には刺繍のお友達と一緒にご来場。それぞれ反響などはありましたか?
あの作品で大丈夫だったかな、家で見るのと違ってすごく小さく見えたよね、と少し落ち込んでいると、夫が「あれはあれで一つの作品として成り立っていたよ。
賞をとれるレベルではないけど、まだまだこれから!」と励ましてくれました。
まさか賞を頂けるとは思っていなかったので、本当に驚きました。
一緒に行った友人は、幅広い刺繍を知れて刺激的で楽しかった、会場で私が先生方や出展者の方と話しているのを聞いて、心が動かされた。刺繍は心を満たしてくれるしいろんな気持ちをくれる、出会わせくれてありがとう!と言ってくれました。
未来へ
暮らしの中で、刺繍があることで変わったことはありますか?
心から好きなものと出会い、その「好き」のエネルギーは心も体も元気にしてくれると感じています。
そのエネルギーは人から人へ伝達していくことを今、体感しております。
今後の展望、作家としての想いなど、伝えたいこと。
1つ目は、まずはしっかり積み重ねて刺繍の技術をあげ、趣味で刺繍をする人から作家になりたいです。
2つ目に、息子の誕生で頂いた地域の方々とのたくさんのご縁、今回のフェスで刺繍が好きという共通点で頂いたご縁・・・一つの出会いが新しい出会いにつながり、これがこの先も続いていくように、目の前の人との会話を楽しみ、大切に育んでいきたいです。そして刺繍を通して誰かのお役に立ちたいと思っています。
最後に、子育てをしながらでも、自分の時間を大切にして、いつでも一生懸命な姿、楽しんでいる姿を子どもに見せていきたいです。
waccaさんにとって刺繍とは?
苦しい時にはそっと寄り添ってくれ、楽しい時には楽しさを倍増させてくれる存在です。
人生をより豊かにして、学びをくれる、なくてはならない大切なパートナーになりました。
刺繍作家 wacca
2歳児の息子の子育て中。
2歳の息子が生まれた時の足型をモチーフにした自身初のオリジナ
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皆様の声を楽しみにしています
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