刺繍作家とは?刺繍作家としてのコンセプトのあり方
4月14日「刺繍作家とは?刺繍作家になるには?」では、オリジナル図案の重要性について書きました。
この記事は検索でもよく読まれていて、「刺繍作家になるには」というキーワードで私のサイトを訪れてくれる方が多いのを知り、嬉しく思っています。
実際につい数日前のこと、とある企業様から「この記事を使わせてほしい」とご依頼をいただいたこともありました。さらに「続編を書いてほしい」とリクエストをいただいたのです。
そこで今回は、刺繍作家にとって大切な コンセプト=作品の軸となる想い についてお話ししたいと思います。
刺繍作家とは?刺繍作家になるには?
刺繍の魅力に取りつかれ、その道で・・・
刺繍作家に「コンセプト」は必要?
「テーマ」や「想い」「軸」と言い換えることもできますが、これは作家活動を続けるうえで私の中ではとても大切だと思っています。
なぜなら、刺繍作家の道は迷いやすいからです。
作品販売か、教室運営か。どちらを中心に活動していくのか迷うとき、あるいはSNSにどんな発信をすべきか悩むとき。
好きなものを作るのか。それとも売れる、需要があるものを作った方がいいのか。
流行りに乗るべきか。
誘われたこのイベントに出展するべきか否か。
そんなときに戻る場所となるのが「コンセプト」。
自分が何を表現したくて、どんな世界観を届けたいのか。はっきり言葉にしておくことで、選択に迷わなくなるのです。
私が大切にしているコンセプト
私自身のコンセプトは、この文章に集約されています。
この言葉は、初めてイベントで作品を販売したときからずっと掲げてきたものです。名刺やThank youカードにも入れていました。今はHPや各種SNSの冒頭で見ることができます。
かつてはこの文章の後に「贅沢な私の願い、叶いますように。」と付け加えていたこともあります。
作品を作るだけでなく、想いを言葉にして残すこと。それが、私にとって「作家であること」の第一歩でした。
古き良きデザイン × 新しい技術
もうひとつ、近年加えた大切なフレーズがあります。
これは、iPadで図案を描いたり、3Dプリンターでミニチュア制作も楽しむようになった頃に加えました。
アンティークの美しさも、デジタルの便利さも、どちらも大好き。
どちらも融合させたい、そんな想いを素直に表現した言葉です。
ありがたいことに、この「Antique × Digital contents」は他の作家との大きな差別化となるようで、他業種の方からも「面白いね!」と褒めていただくことが多く、自分らしさの象徴になっています。
なぜコンセプトを打ち出し、言語化する必要があるのか?
「想い」は頭の中にあるだけでは伝わりません。
はっきりと言葉にしてこそ、周囲に伝わり、そして自分自身の道しるべになります。
• 言語化することで、迷ったときに立ち戻れる
• SNSや作品紹介文に一貫性が生まれる
• 「この人といえばこれ!」と覚えてもらいやすくなる。そんなふうに思います。
逆に言葉にしなければ、作品はただ「上手」で終わってしまうこともあります。
刺繍が上手い人は世の中にたくさんいます。その中で埋もれずに「選ばれる作家」「覚えてもらえる作家」になるには、コンセプト=ブランドの核 が欠かせないと思いませんか?
コンセプトを持っている作家は、作風に一貫性があり、そこに信頼が生まれると思います。
ひとつひとつの作品に「その人らしさ」が宿り、自然と世界観が形づくられていきます。結果として、見る人の記憶に残りやすく、「あの作家といえばこの雰囲気」と認識してもらえるようになります。ファンや企業から声がかかるきっかけも増え、ブランドとして確立していく流れにつながるのです。インスタなどのSNS、HPで世界観を表現しやすいでしょう。
一方で、コンセプトを持たずに活動していると、作品は美しくても印象が散漫になってしまいます。「上手だけれど、何を伝えたい作家なのか分からない」と感じられると、強いファンがつきにくく、選ばれる存在になるのは難しくなります。
短期的には「器用でいろんな作品が作れる人」と評価されても、長期的にはファンが根付かず、選ばれる理由が弱くなってしまうのです。
つまり、コンセプトがあるかどうかは、作家としての活動が「ただの趣味の延長」で終わるのか、それとも「自分ブランド」として長く愛され続けるのか、その分かれ道になると思います。
私が急にキャラクター系の刺繍を始めたら、生徒さんは驚きますよね。私の作風を好んで選んできてくれている生徒さんたちからすると裏切り行為もいいところ。今まで培ってきた信頼関係が一気に崩れてしまうでしょう。
どうやってコンセプトを決めればいい?
「でも、私にはまだコンセプトがない…」と思う方もいるかもしれません。
けれど安心してください。
最初から完璧なコンセプトを決める必要はありませんし、むしろ最初はあいまいでかまわないのです。
大切なのは、少しずつ自分の中にある想いを言葉にしていくこと。その過程で自然と形が見えてきます。変化があってもいいのです。
たとえば、まずは 自分が「これだけは譲れない」と思う価値観 を探してみる。誰かに見せるためではなく、自分にとって大切にしたい気持ちです。
たとえば「作品は丁寧でありたい」「暮らしに寄り添う刺繍を作りたい」といったもの。小さな言葉でも十分です。
次に、自然と惹かれるモチーフや色 に目を向けてみましょう。気づけば花の図案ばかりを描いている、白糸ばかりを手に取っている──そんな無意識の選択の中に、あなたらしさが隠れています。
さらにもうひとつヒントになるのは、人から「あなたらしい」と言われたことです。他人の目に映る自分の強みや個性は、案外自分では見落としているもの。人からの言葉を手がかりにすると、自分では気づかなかった方向性が浮かび上がることがあります。
こうして出てきた言葉やイメージを紙に書き出してみると、最初はぼんやりしていた想いが、少しずつ輪郭を持ち始めます。そして「これが私の軸かもしれない」と思えるものが見つかるのです。
こうして「価値観」「好きなモチーフ」「人から言われる自分らしさ」などを集めていくと、少しずつコンセプトの核が見えてきます。
実はこれは、私自身のロゴモチーフを決めたときにも当てはまります。
「刺繍ルーム」の目印となっている馬のシンボルマーク。これは単に、私が昔から「なぜか好き」だったものを組み合わせたものなのです。馬のシルエットが好き。アカンサスの葉が好き。その二つを描いて組み合わせただけ。
でも、その「好き」が積み重なったモチーフが、いまでは刺繍ルームという世界観を象徴し、使い続けた結果人に伝わるシンボルになっています。
作家として世界観を育てるということ
コンセプトは一度決めたからといって、固定する必要はありません。
活動を続ける中で変化したり、進化したりしていくのが自然です。
私自身も「アンティーク」だけだった想いに「デジタル」という要素を加えました。
それによって「古いものも新しいものも好き」という私自身の個性が表現できるようになったのです。
大切なのは、「今の自分を一番よく表す言葉を持つこと」。
それが作品を支え、自分ブランドを強くしてくれます
自分ブランドがあると、自分が強くなる
作家活動は孤独な時間も多いものです。
そんな中で「私はこういう想いを持っている」と言えることは、自分を支える力になります。
ブランドは他人に見せるためだけでなく、自分の心を守るものでもあるのです。
自分ブランドがあるからこそ、長く活動を続けられる。私もそう実感しています。
個別相談「サポートプラン」
先日も、サポートプランの生徒さんと「自分ブランドをどう築いていくか」「自分のやりたいことは何か」について深くお話をしました。
言葉にするのが苦手でも、一緒に掘り下げていくと「これだ!」という軸が見つかることが多いです。
• 作品販売をしたいけど、どう差別化したらいいかわからない
• いつか教室を開きたいけど、自分の「今」が見えていない
• SNS発信をしているけど、方向性に迷っている
そんな方に向けて、私はお手伝いしています。
ただ、このコンセプト決めに関しては一つ言えることは少人数の場で考えることがおすすめです。
周りの意見にかなり左右されて、気持ちが揺れやすい時期。
多くの人の意見が耳に入ってしまうと、自分の心の声が聞こえなくなってしまいます。
サポートプランは、自分の方向性への道標となり、あなたの好きを見つけ、そしてあなたらしさを言語化します。
1人で考えてもなかなか前に進めない時、ご連絡ください
刺繍