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株式会社ブーケ賞② by刺しゅうアートフェスティバル  

2025/08/16

2025年7月17日〜21日に開催した「刺しゅうアートフェスティバル2025」において、弊社からは

 

・株式会社ブーケ賞(2名)

・andBouquet賞(5名)をお贈りいたしました。

その中から本日は、株式会社ブーケ賞を受賞された
「trims  髙林 美沙 」さんの作品をご紹介します。

 

小さな刺繍の可愛い世界観!ぜひご覧ください。

株式会社ブーケ賞
刺繍作家インタビュー

刺しゅうアートフェスティバル2025 にて、株式会社ブーケ賞を受賞された「trims  髙林 美沙」さんの作品。
見た瞬間、頭に浮かんだのは小さい頃の息子の姿で、懐かしさと、愛らしさで胸がいっぱいになりました。
可愛い作品のデザインを描くことががあまり得意ではない私にとって、とても刺激的で新鮮な出会いでした!

道路に線路にトンネル。救急車にヨット。踏切まで!
次々に目に飛び込んでくる楽しいモチーフがぎゅっと詰め込まれているにも関わらず、不思議とごちゃつかず、むしろ一つのキャンバスとして美しく調和している。可愛らしさと同時に強い存在感があり、作品としての主張があると感じました。

世代を超えて心を惹きつける「作品力」

確かな刺繍技術はもちろんですが、全体を一つにまとめる構成力、そして「余白」の使い方に深く感銘を受けました。



この可愛らしさ、多くの方に見てもらいたい!!
 

福田彩

色褪せない可愛さと遊び心
おもちゃの世界を針と糸で


trims  髙林 美沙

 刺繍との出会い

高林さんが刺繍を始めたきっかけを教えてください
初めて作った作品はどんな作品でしたか?

刺繍を始めたのは7年前、息子を妊娠中にこの子の為に何か手作りしたいと思ったのがきっかけでした。

小さい頃から手仕事が好きで、小学生の頃はフェルトでマスコットのキーホルダーを作ったり、編み物でバッグを作ったり友達とマフラーを作って交換したり、母に教えてもらいながら手芸を楽しんでいました。中学に上がると部活に忙しくなり、そこから大人になって妊娠するまで手芸からはすっかり離れていました。

妊娠して仕事を辞めたことで時間ができ、お腹の子のために何か作りたいという気持ちから久しぶりに手芸をしたくなりました。

そんな中、友人の家に遊びに行ったときにクッションに小さな刺繍がしてあるのを見て、すごく可愛くて自分でもやってみたいと思いました。

身近に刺繍が得意な友人がいたので、まずは一人でやってみて分からなかったら教えてもらおうと思い、本を見ながら刺してみたのが最初の刺繍です。私の従姉妹の赤ちゃんが息子より2週間早く産まれたので、出産祝いにガーゼハンカチにお名前とリボンとちょうちょのモチーフを刺繍しました。久しぶりの手芸が楽しかったのと、従姉妹がすごく喜んでくれて嬉しかったのを覚えています。

その後、刺繍の得意な友人に教えてもらいながらいろいろ作るうちにどんどんのめり込んでいきました。


制作とこだわり

普段どんな刺繍をされていますか?
制作スタイルやこだわりがありましたら教えてください。

2019年から作品販売を始め、動画講座や単発のワークショップも開いています。

特にウール刺繍糸をよく使っていて、ふんわりふっくらとした立体感が出ることや、サテンステッチやロングアンドショートステッチがきれいに刺しやすいところが気に入っています。


刺繍の時間はいつ、どのように過ごされていますか?集中するための工夫はありますか?

子どもが学校に行っている間に刺繍をしています。仕事として刺繍をしようと思っても家にいるとつい家のことをしたくなってしまうので、最近はタイムカードのアプリを取り入れました。タイムカードをつけている間は家のことをせず刺繍に集中するようにしています。

刺繍の時は音楽と飲み物とアロマがお供です。細かい刺繍をしていると緊張したり疲れたりすることもありますが、この3つお供のお陰で楽しくやれています。

デザインと作品への思い 

今回の作品のデザインを決めたきっかけや、こだわりポイントを教えてください。

車や乗り物のモチーフは元々お客様からのオーダーメイドで作り、その後定番商品として作っていたものです。うちの息子も車や乗り物が好きで一緒に遊んでいる時におもちゃのレールや道路のパーツを組み合わせてレイアウトを作るのが楽しく刺繍でもこの世界を作ってみたいと思ったのがこのデザインに決めたきっかけです。

こだわりは、木のおもちゃをイメージしてリアルなデザインよりもデフォルメした形の面白さを意識したところです。カラフルな色合いはこどものおもちゃや絵本をイメージして、パっと見たときに楽しい!と思える色使いにしました。

刺繍糸はアップルトンクルウェルウール糸を使用しています。絶妙なニュアンスカラーが揃っているので、糸の色を活かしたいという思いもありました。赤や緑などの濃い色はこっくりと、白やピンク、水色などの淡い色は少しくすんだ色にして、全体の色合いががまとまるように意識しました。

制作の中で1番難しかったところ、そして1番満足な点、こだわった技法などはありますか

一番難しかったところと一番満足な点は、ほとんどのモチーフをサテンステッチやロングアンドショートステッチで刺し埋めたところです。広い面を刺し埋めるのは根気のいる作業でしたが、刺繍した部分に厚みが出るので、刺繍が盛り上がって立体感が出るのが気に入っているところです。

作品の「余白」

小さな刺繍を大きなキャンバスに配置。
その際のこの「配置感」が素晴らしいと感じました。
一つ一つの刺繍に目がいくような何か計算された秘密があるのでは

ありがとうございます。最初に各モチーフの図案をひとつずつ描き出しました。乗り物の図案が元々あったので、それに合わせて道路や線路の大きさを決め、本物のおもちゃのパーツのように短い直線とカーブに分けて図案を描き、その他のモチーフも作りました。その後どこに何を置くか簡単なイラストで何パターンも描いてみて一番しっくりくるものを選びました。

人の目は1枚の絵の中で左上から右下に視点が流れると聞いたことがあるので、左上と右下に注目してもらいたい大きなモチーフを置くことを意識しました。

道路、線路、鉄道車両、トンネル、池、家などの大きなものの位置を決めてから、道路に車を、余白に木やお花をバランスがよくなるように配置しました。


活動と広がり

作家名「手刺繍trims」のお名前の由来、作家内容を教えてください

旧姓の名前「Torii Misa」からアルファベットを少しずつ取りました。
また、英語の「切り取る」という意味も重ねています。
目に映るたくさんのものの中から、綺麗なもの、かわいいもの、かっこいいもの、好きなもの・・・、そんな素敵なものを切り取って刺繍にしたい、という想いも込めています。

作品は「ママとこどもに嬉しい刺繍」をコンセプトに、母子手帳ポーチやおむつポーチ、お着替え袋やスタイなどを作っています。

お子さんの成長とともに長く使っていただけるように年月が経っても色褪せることのないシンプルでスタンダードな可愛さを心がけています。


刺繍をお仕事にするようになった経緯と、作品販売や講座に込めている思いをお聞かせください。

刺繍を教えてくれた友人や周りからの薦めで作品販売に興味を持ちました。家で産まれたばかりの息子を見ながら少しでも収入が得られたらいいなと思いハンドメイドサイトで販売を始めました。

刺繍を始める前に友人から刺繍のプレゼントをもらったことがあり、繊細で丁寧な手仕事と、私のためにたくさんの時間をかけて作ってくれた優しい気持ちが本当に嬉しくてとても感激しました。

刺繍を始めてからは家族や友人など親しい人たちに喜んでもらいたくてプレゼントとして作っていました。

このもらう喜びと贈る気持ちのどちらも販売するうえで大切にしています。作品を作るときはお顔は見えずとも購入者様のことを思い浮かべ親しみと感謝の気持ちを込めて、作品が手元に届いたときには私がプレゼントにもらったときに受けたような感動を味わってもらえるように、という思いで販売しています。
 

刺繍がくれた“意外なご縁”や“人生の転機”があれば教えてください

作品や動画講座を購入してくださる方がいることが本当にありがたいご縁だと思っています。ネット販売が主な活動なので、遠くにお住まいの方など刺繍をしていなければきっと出会うことのなかったであろう方に私の作った刺繍作品をお届けできるのはすごいことだといつも感じています。

対面のワークショップをやるようになってからも、刺繍や手芸が好きな方と直接繋がれたり、ワークショップがきっかけで刺繍を始めてくださる方がいらっしゃったり、嬉しい出会いがたくさんあります。


 

フェスへの挑戦

刺しゅうフェスに出展しようと思ったきっかけ、ご家族や周りの反応はいかがでしたか?

最初にパントン久美子先生のメルマガやインスタグラムの投稿で、彩先生と刺しゅうアートフェスティバルを企画していることを知りました。お二人の先生方の、刺繍界をもっと盛り上げたい、作品づくりを楽しんでほしいという熱い想いに背中を押され出展を決めました。刺繍を仕事にする身としてたくさんの方に見てもらえる場、手芸メーカーや出版社の方にも見てもらえる場に作品を出すことで今後の仕事に繋がるチャンスになったらという思いもありました。

家族も応援してくれて、特に息子は一緒に遊んでいる時に見ている景色を刺繍しているんだよと言うととても喜んでくれました。

 

この作品を作るにあたってデザイン的に考えたこと。デザインから完成までどのようなスケジュールで過ごしましたか?

おもちゃの線路を繋げるように図案を作りたかったので、あえて奥行きを持たせず平面的なデザインにしました。

刺繍のデザインを考えるときには「年月が経っても色褪せない可愛さ」を心がけています。簡単な形にデフォルメした絵にすることで、時が経っても可愛いと思ってもらえる刺繍が作れるのではと思い、図案を描くときに意識しています。

申し込みから当日までのスケジュールは全く計画的に進められておらずお恥ずかしいのですが、5月半ばに図案が完成し、5月末の写真送付の時点では半分ほどしか刺せていませんでした。その後もコツコツやろうと思いつつ全然できず、作品展前の1週間で一気に仕上げました。

焦りつつも、刺繍したいものを好きなだけ詰め込んだ図案は刺すのが楽しかったです。少しずつモチーフが出来上がっていく過程も、完成が近づいていくのが目に見えてわくわくしました。

作品が完成した時、会場で見た時、そして今。感情の変化はありましたか?

作品が完成した時は、間に合ったという安心感と、初めての大作が完成したという達成感、自画自賛ですが可愛いものが作れたという満足感で作品を送り出しました。

会場で見た時はとにかく来場者数が多かったので、たくさんの方に作品を見ていただけて出展してよかったと思いました。私の作品を写真に撮ってくださる方がいたのも嬉しかったです。

他の出展者様達の作品が大変素晴らしく、様々な技法やデザイン、丁寧な手仕事を見てとても勉強になりました。

今は自宅の刺繍道具を置いてある場所の壁に作品を掛けています。見るたびにまた頑張ろうという気持ちになります。刺繍株式会社ブーケ賞をいただけたことがとてもありがたく自信にもなりました。

これからのこと

今後の展望、作品、作家としての想いをお聞かせください

今後は動画講座の数を増やすことと、作品販売を並行してやっていけたらと思っています。

動画講座は作る楽しみを共有したい、分からなくて困っている人をサポートしたい、刺繍人口を増やしたい、という思いでやっています。

作品販売では、手刺繍ならではのステッチの豊富さやふっくらとした立体感、糸の質感など、手仕事でしか生み出せない味わいを感じてもらえたら、という思いで制作しています。

髙林さんにとって刺繍とは?

生活を豊かにしてくれるものだと感じています。趣味としての刺繍をすることは、忙しい毎日の中で心を癒やす大切な時間になります。

自分のために作るのも、誰かを想って作るのも、もらうのも買うのも、作り手と受け取る方のあたたかい気持ちのやりとりが生まれます。

趣味で作る刺繍も仕事で作る刺繍も相手を想う気持ちを大切に、これからも心を込めて刺繍をしていきたいです。

trims  髙林 美沙

刺繍作家
こどものために手作りをしたい、という想いから刺繍を始め、2019年から刺繍作品の販売を開始。
「ママとこどもに嬉しい刺繍」をコンセプトに、フランス刺繍やウール刺繍、パンチニードルを使って作品を制作しています。
お子様の成長とともに長くお使いいただけるように、年月が経っても色褪せることのないシンプルでスタンダードな可愛さを心がけています。
おもちゃの乗り物の世界
 
息子と電車のおもちゃやミニカーで遊ぶ時に線路や道路をつなげてレイアウトを作るのが楽しく、刺繍でもその世界を作ってみたいと思いました。
橋で立体交差させたり、トンネル、踏切、バス停⋯わくわくするものを詰め込みました。

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