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ケルト模様の結び目

2025/04/19
前回の記事では
オリジナルデザインが重要と言っておきながら、

私は今、矛盾したことをしています。

アンティーク本のこのデザインを見た時にどうしても作品にしたくなってしまったのです。ただ、アンティーク本はアルファベットが書かれているだけで、どう刺繍で表現するかなどは書かれていませんので、私ならこうするかな?そんな解釈で作品を作っています。その研究が止められなくて、3個目を刺しています。まぁ、2個目はボツ作品ですが…

 
私は昔から、この複雑に絡み合うデザインというものが好きで、よくケルト模様を書いていました。

まだデジタルではなく鉛筆などで手書きをしていた頃の懐かしく、恥ずかしい頃の投稿です。

皆様はこのケルト模様、知っていますか?

ケルト模様の魅力

ケルト模様とは

ケルト模様(Celtic Patterns)とは、紀元前8世紀から紀元後11世紀頃にかけて、ヨーロッパの広範囲に居住していたケルト人によって発展した装飾芸術のことを指します。特徴的な「結び目(ノット)」パターンは、途切れることなく連続する線が複雑に絡み合い、始まりも終わりも明確でない永遠の循環を表現しています。
Celtic Knot 結び目「ノット」と聞くと刺繍家はそれだけで心を掴まれるのではないでしょうか
 

ケルト模様の特徴として挙げられるもの

・連続性  一本の線が途切れることなく続く設計

・対称性と反復 バランスの取れた幾何学的パターン

・自然モチーフ 動植物や自然要素の様式化された表現

・複雑さと精密さ 細部まで緻密に計算された設計

これらの特徴に加え、「永遠」「無限」「生命の循環」といった象徴的な意味を持つものとなっています。

この中でも特に連続性における複雑さに惹かれた私。私のモノグラムデザインに通じるものを感じてくれる生徒さんがいることでしょう。上下に絡まり流れるようなラインと計算されたデザインは私に大きく影響を与えてくれてました。

ケルト模様の種類と象徴

ケルト模様にはそれぞれ意味があります


・トリニティノット(三位一体の結び目)

三つの輪が絡み合うデザインで、キリスト教における「父・子・聖霊」の三位一体を表すとされますが、キリスト教以前には「生・死・再生」のサイクルや「過去・現在・未来」を象徴していたとも考えられています。

 

・シールド・ノット(盾の結び目)

四つの角を持つ結び目で、保護や安全を象徴し、悪霊や災いから守る力があるとされていました。家族の守護や安全のシンボルとして用いられることが多いです。

 

・ ラブ・ノット(愛の結び目)

二つの線が絡み合って一つになるデザインで、永遠の愛や絆を象徴します。現代では結婚式やパートナーシップの象徴として人気があります。
 


・セルティック・スパイラル(渦巻き)

拡大または縮小する渦巻きのデザインで、成長や拡張、宇宙のエネルギーの流れを表現するとされています。また、人生の旅路や精神的な進化も象徴しています。

・ ケルティック・クロス(ケルト十字)

伝統的な十字架に円が加わったデザインで、キリスト教の十字架とケルト文化における太陽崇拝の融合とされています。信仰と古代の知恵の調和を表しています。

 

・ブック・オブ・カウズ・ノット

ケルズの書に見られる複雑な装飾パターンで、特に有名なのがChi-Rho(キー・ロー)のページにある装飾です。キリストの名の最初のギリシャ文字を表現しています。

右の本はケルト模様を書いてみたい人におすすめ。
わかりやすい図と英語表記でたくさんのパターンが描かれている教科書的な本

左はケルズの書の解説本。ケルト模様がたっぷり描かれたています。歴史も学びたい、美しいカリグラフィーの魅力も好きな人におすすめな本です

『ケルズの書』とは、8世紀に制作された聖書の手写本でアイルランドの国宝。
 

これらの模様は単なる装飾ではなく、ケルト人の世界観や信仰、価値観を表現する重要な文化的シンボルでした。
時代とともにそのデザインはレース、アクセサリーなどの金属加工、木工彫刻、カリグラフィーでも表現され、現代ではタトゥーやジュエリー、インテリアなどに取り入れる人も多くいます。

私は今までは
ただ単にケルト模様を書くことが好きでカリグラフィー要素として楽しんでいました。刺繍にしたのは今回は初めてですが、過去にはブティにケルト模様を入れたことがあります

 

刺繍とケルト模様

好きなものは10年経っても変わらず。それが私のデザインの軸となっている。
自分のデザインではないですが、原点回帰な気分のデザインに触れながらいつもと違った刺繍を楽しんでいます。

刺繍と言えるかな?私のデザインではないし、課題としてこれはどうなのか?!
なんて不安な気持ちもあったのですが、実際の作品をみた生徒さんからはやってみたい!そう言ってもらえたので自信を持って課題としてお届けしようと思います。

なんでもやってみたい。新しい技法もどんどんチャレンジしたい前衛的な生徒さんが多い刺繍ルームで良かった〜。ケルト模様の課題、お楽しみに。

コメント、感想、お待ちしています。